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最強チャンピオン・リゴンドーに挑む29歳無名挑戦者
2014.12.24 update


年末恒例のTBSのボクシング中継。12月30日の強豪ギレルモ・リゴンドー戦に大抜擢されたのは、全国的にはほぼ無名な、OPBF東洋太平洋フェザー級チャンピオンの天笠尚(あまがさ ひさし)29歳。世界ランクはWBA世界スーパーバンタム級10位。天笠は所属する山上ジム(東京都世田谷区)唯一のチャンピオン。他に有名ボクサーはおらず、練習環境に恵まれているわけではない。ちなみに、美人モデルボクサーの高野人母美(2013年11月まで山上ジム所属、現協栄ボクシングジム所属)は、天笠の試合を見たことがきっかけでボクシングを始めたという。

群馬県太田市出身、高校3年の9月からボクシングを始めて、19歳でプロデビュー。元々世界チャンピオンを目指して始めたわけではなかった。2度目の挑戦で日本王者になったのが26歳の時。ここ3年間は13試合無敗。「痩身のヒットマン」の異名を持ち、34戦 28勝(19KO) 4敗2分。

天笠のパートナーを務めるのは、チーフトレーナー&メディカルトレーナーの内田洋二氏。氏は、新日本プロレスの元レスラーで、現メディカルトレーナーの三澤威が手がける「ミサワ整骨院」(東京都世田谷区)の鍼灸師でもある。チームを組んで4年、厚い信頼関係にある。

一方のギレルモ・リゴンドーは、キューバ代表として、シドニーとアテネと2大会連続のバンタム級金メダリスト。プロ転向のため、アメリカに亡命、プロデビューからわずか1年半の7戦目でWBA世界スーパーバンタム級王座を獲得。2013年4月にはニト・ドネア(フィリピン)に判定勝ち、WBAとWBO統一王者となっている。

アマチュアエリートからの、渡米後はチャンピオンが約束されたバックアップを受けての活躍ぶり。アマチュア戦績は(400戦以上など諸説あるが)247戦243勝4敗、プロ転向後は14戦14勝無敗(9KO)、強豪中の強豪といえる。
リゴンドーの今回の来日の理由は、対戦相手に避けられる程の強さと、手堅い試合運びが災いして、エキサイティングな倒し合いが好まれるアメリカでは人気が低いこと。大手プロモーション事務所トップランクとの契約が2014年3月に終了、テレビ局の縛りがないことで、日本での試合が可能となった。

チャンピオン絶対有利との前評判。不安要素があるとすれば、34歳という年齢と、試合間隔の長さ。2013年以降はわずか3試合しかしていない。そしてトレーナーが頻繁に変わることくらいだろうか。身長179cmの天笠に対して165cmのリゴンドー。15cmの身長差はどう影響するだろうか。

当初リゴンドーの対戦相手には、東洋太平洋スーパーバンタム級王者の和気慎吾(古口ジム)で話が進んでいたとの情報もある。天笠陣営にリゴンドー戦の打診があったのは、おそらく11月中旬。

タイトル挑戦の話には3日間悩んだというが、「ボクサーとして、勝てる試合ばかりするのではなく、時には挑戦しないといけない。ボクサーとしての原点にかえっての挑戦」と、圧倒的不利なのは覚悟の上で挑戦を受けた。

本来フェザー級の天笠にとって、スーパーバンタム級は初めての試合。痩躯とはいえ、179cmある天笠にとって、1階級落としての減量はかなり厳しいと思われる。前回の防衛戦(10月15日)は判定負け寸前から、最終ラウンドでの逆転TKO勝利。試合間隔わずか2カ月半、ダメージは抜けたのか。世界戦までの準備期間も1ヵ月少々という厳しい状況。

昨今のボクシングブームで、アマ出身の有望選手は、早くからテレビ局が青田買いして囲い込み、堅実に試合をこなして、大切にチャンピオンに育て上げる状況。11年かけてタイトルマッチに挑戦する天笠選手はまさに雑草といえる。

KO勝利を逃せば、勝利者インタビューで「退屈な試合をしてしまって申し訳ない」と、口癖のように語る天笠だが、今回の試合は、たとえ退屈な試合になったとしても番狂わせが見たいというファンが多い筈。

記者会見の席で「99%勝てないかもしれない。1%のチャンスに賭けたい」と覚悟を語った天笠。異色のタイトルマッチから目が離せない。


Photo: Hiroaki Yamaguchi

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