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BOXINGTIMES LEGEND vol.4
25連続防衛の世界記録を持つ〝褐色の爆撃機〟ルイス
2015.09.01 update

世界のボクシング史をひもとき、光り輝くアンタッチャブル・レコード(絶対に破られない記録)に出会うのは大きな楽しみである。その代表的な一つが、元世界ヘビー級チャンピオン、ジョー・ルイス(米国)が打ち立てた25連続防衛だろう。在位期間は12年。第二次世界大戦を挟んでベルトを守り続けたのは驚異の一言だ。正確無比な強打はブラウン・ボンバー(褐色の爆撃機)と呼ばれ、ヘビー級の一時代を築いた。

8febc66de724a7a0c55f5f6e2668952f本名はジョセフ・ルイス・バロー。1914年5月13日、米アラバマ州ラファイエットに生まれた。父は綿つみ農夫で、貧しい家庭に育った。ルイス少年は母からもらった小遣いの一部を使い、軽い気持ちでボクシングジムの門をたたいた。才能は大きく開花、アマではライトヘビー級のトップとして活躍。50勝(43KO)4敗の好成績を残し、プロ転向を決めた。当時からショートの左右連打は鋭く、将来に太鼓判が押された。

34年7月、初回KO勝ちでデビュー。1年目に12連勝(10KO)するなどホープ街道を快走、35年には元世界王者のプリモ・カルネラ(イタリア)、マックス・ベア(米国)をもKO、さらに実力がアップ。36年、世界初挑戦への腕試しとして組まれたのが、元王者マックス・シュメリング(ドイツ)との一戦だった。どう考えても勢いのあるルイス有利かと思えたが、何と12回にKOされ、屈辱の初黒星を喫した。

初の挫折を素直に反省した。ルイスはキャンプに夫人を同行することもあったが、シュメリング戦からひたすら練習に打ち込んだ。敗戦を良き糧に再出発した。こうしてたくましさを身につけ、37年6月、シンデレラマンことジェームス・ブラドック(米国)のヘビー級王座に挑んだ。ルイスは初回、不覚のダウンを喫したが、すぐ立ち直り、8回、逆転KOでついに頂点に立った。

しかし、浮かれるわけにはいかない。シュメリングにリベンジしない限り、心のモヤモヤは解消されない。38年6月、4度目の防衛戦で両者の激突が実現した。当時、米国とドイツは大戦をめぐり、敵対関係にあり、国の威信を懸けた〝代理戦争〟でもあった。ヤンキースタジアムは7万人を超すファンで埋まった。ルイスはゴングとともにラッシュを仕掛け、電光石火の初回KO勝ちでうっぷんを晴らした。まさに復讐の鬼。ルイスの気迫が大きく上回り、ヘビー級は揺るぎない「ルイス時代」に突入した。

米国の英雄となったルイスの安定感は抜群。落ち着いたスタンスから繰り出される左右のショート連打には目を見張るものがあり、加えてディフェンスも秀逸。相手の強打を一瞬でかわすテクニックにも秀でていた。リングを離れると品位ある紳士に変身。温厚な性格が誰からも尊敬され、黒人としては珍しいほど大衆の支持を受けた。そして、防衛のテープは伸びていく。大戦の影響でブランクもあったが、王座は不動だった。

その中、最大の試練ともいえるのが、41年6月、ビリー・コン(米国)を相手にした18度目の防衛戦だろう。コンはライトヘビー級の実力者で、スピード十分のテクニックを持ち、2階級制覇を狙ってきた。12回までコンに主導権を握られ、王座交代の空気が流れていた。しかし、13回、一気のコンビネーションで逆転KOに退けた。どのようなピンチに見舞われても最後に勝つのはルイス。そういう伝説まで生まれた。

026-boxing-theredlist43年、ルイスは米国陸軍に入隊した。戦争が激化をたどる中、各地の部隊を慰問し、100近いエキシビションに出場。ほとんどが無償で、愛国者の証明でもある。ルイスの出現は人種差別が顕著な米国社会に素晴らしい影響を与えた。戦争が終わり、再び防衛戦をこなしていく。結局、48年6月、ジョー・ウォルコット(米国)をKOに破り、25連続防衛に成功したところで引退を表明した。

しかし、金銭的な問題などで復帰を決意。50年9月、世界ヘビー級王者エザート・チャールズ(米国)に挑戦したが、往年のスピードはなく、判定で敗れた。引退は確実と見られたが、グローブをはめ続ける。チャールズ戦から8連勝したが、51年10月、若き日のロッキー・マルシアノ(米国)に8回KOで敗れ、二度と戻ってくることはなかった。ラストファイトでは哀しい姿が浮き彫りとなった。

通算成績は68勝(54KO)3敗。81年4月、心臓発作のため、66歳で波乱の生涯を閉じた。デトロイトには功績をたたえ、「ジョー・ルイス・アリーナ」という競技場が建てられ、ワシントンDCにあるアーリントン国立墓地に埋葬された。波乱に満ちたボクサー人生は「米国の誇り」として永遠に語り継がれていくだろう。

文:津江章二

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