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BOXINGTIMES LEGEND vol.5
時代を席巻した無敗伝説 49連勝43KOのマルシアノ
2016.01.13 update

歴史は繰り返す、という。ボクシングのヘビー級こそ格言そのものの世界である。拳聖ジャツク・デンプシー(米国)から〝褐色の爆撃機〟ジョー・ルイス(米国)と英雄が生まれ、1950年代はこの男、ロッキー・マルシアノ(米国)が話題を独占した。破壊的な連打は〝ブロックトンの高性能爆弾〟と呼ばれ、王座を奪ったときの一打「スージーQ」は人類最強のパンチとして語り継がれる。デビュー以来、不敗の49連勝(43KO)でリングを下りた伝説の無敵王者だった。

マルシアノ2本名ロッコ・フランシス・マルケジアノことマルシアノは1923年9月1日、米マサチューセッツ州ブロックトンで生まれた。イタリア系米人で父は靴屋の職人。生活は貧しく、幼いころから数多くのアルバイトをこなした。19歳のとき、陸軍に入隊。ここでボクシングを覚えた。本人は意外にも大リーガーを夢見ていたが、入団テストに不合格となり、プロボクサーで生きていくことを決意した。

47年3月、3回KO勝ちでデビュー戦を飾ると、白星街道を突っ走った。スピード不足は否めなかったが、それを補って余りあるファイティングスピリットが凄まじいの一言。打ち合いでは決して後退することはなく、相手がキャンバスに崩れるまで打ち続けた。スタミナも無尽蔵。試合がもつれると本領を発揮し、ほとんどの試合をKOで決着をつけた。特にたたきつけるような左右フックは重く、破壊力があった。

51年10月、そのホープの試金石の一戦が組まれた。偉大な元王者ジョー・ルイスをどう料理するのか。誰もがマルシアノのフィニッシュに注目した。序盤こそルイスのテクニックに悩まされたが、中盤からはワンサイドの展開に。8回、まず左フックでダウンを奪い、立ち上がるルイスを容赦なく攻め、最後は強烈な右フックで仕留めた。ルイスはついに引退を決意、明白な新旧交代のKO劇となった。

翌52年、強打に磨きをかけ、9月、時の王者ジョー・ウォルコット(米国)への初挑戦が決まった。予想は勢いのあるマルシアノ有利。そのカケ率に王者は燃えた。「マルシアノなんて問題にしていない」と強気のコメント。その言葉通り、初回、マルシアノは左フックを浴び、痛烈なダウンを喫した。その後も王者のペースで進んだ。マルシアノはいつものように執ように迫るが、パワーを見事なまでに封じられた。
ROCKY
終盤に入っても王者のテクニックは健在で、マルシアノは攻めあぐねた。ついに初黒星か。リングサイドは騒々しくなった。そして、13回のゴングが鳴った。王者がロープを背に右を打とうとした瞬間、強烈無比な右フックがクリーンヒット。崩れた王者はピクリとも動かない。新時代の扉を開けた一打は人類最強のパンチとも呼ばれ、本人がスージーQと名付けたことで知られる。1930年代、同名のダンスの小刻みなステップがあり、王者を追い詰めた動きとそっくり。こうして時のヒーローに躍り出た。

新たな英雄の快進撃は止まらない。初防衛戦でウォルコットを1回に沈めるなど、無敵の強さを誇示した。55年9月、6度目の相手にライトヘビー級の怪物アーチー・ムーア(米国)を選んだ。2階級制覇を狙うムーアの実力は高く、2回には右アッパーを食い、ダウン。しかし、6回から逆襲に転じ、9回、鮮やかに仕留めた。

これで不敗の49連勝(43KO)。ムーアを下し、「もう相手がいない」との理由で引退を発表した。鮮やかすぎる引き際だった。この数字にフロイド・メイウェザー(米国)が並び、あらためて注目されたが、KO率の高さなど内容の濃さが光っている。69年8月、単発セスナ機が墜落、同乗していたマルシアノは帰らぬ人となった。ドラマに満ちた波乱の人生。その生きざまは永遠の語り草だ。

文:津江章二

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